今,これを書いている2016年2月。思い返せば,この冬は全体的に暖冬傾向が続きました。個人的には過ごしやすくて良かったのですが,スキー場の方々などは雪が少なく困ったかもしれません。おそらく,この暖冬には,ペルー沖の海面水温が平年より高くなるエルニーニョ現象が関係しています。この影響は世界中に及び,日本では東日本以西で暖冬傾向となることが知られています。熱帯の海面水温は数か月前からある程度予測可能なので,その影響もある程度は予測することができます。実際,2015/16年の冬は観測史上最大のエルニーニョ現象が発達し,秋頃には「今年は暖冬か」と報道されていました。もちろん,熱帯からの影響だけで日本の天候が決まるわけではありませんが,このような熱帯からの遠隔影響は季節予報にとって重要です。
 さて,このような話が,私の研究内容と深く関わっています。私は今,東京大学 先端科学技術研究センターの中村・小坂研究室に所属しています。ここは気象や気候について幅広く研究している研究室で,私は熱帯の降水活動の変動とその遠隔影響について調べています。上で述べたエルニーニョ現象の遠隔影響もその一つです。この研究を始めてから,遠く離れた熱帯の大気海洋に想いを馳せることに楽しさを見出せるようになりました。気象衛星画像を見ると,まず熱帯に目が行ってしまいます。
 第一回日本地学オリンピックで優秀賞を頂き,国際大会の出場経験はありませんが,運営に大学一年次から関わっています。OBとしていろいろな手伝いをしていますが,一番楽しいのは高校生が楽しそうに地学の話をするのを見ているときです。実はもともと大気海洋以外にはあまり深い興味がなかったのですが日本地学オリンピック本選の施設見学で建物の石材が何岩なのかを議論する高校生を見ているうちに,私も身の回りの石材の種類が気になるようになりました。
 悲しいことに,多くの人にとってこのような視点は特異なものかもしれません。しかし,どんな新たな視点も,幸せで豊かな人生をもたらしてくれると信じています。地学を学ぶことで身につく「地学的な探究心に基づく科学的な自然観」は,私たちを幸せにする新たな視点を与えてくれます。日本は災害が多いから防災教育のためにもっと地学をやるべきだ,という短絡的な意見もありますが,地学が本当に教えてくれるのは,こういった地学的な視点や自然観なのではないでしょうか。特に地球科学系に進学を希望する場合には,あらかじめそのような視点を持っておくと良いかもしれません。地学は幸せの源。その幸せを共有し,新たな幸せの種をまく場,それが地学オリンピックなのです。
東京大学 先端科学技術研究センター 理学系研究科 地球惑星科学専攻
関澤偲温
「人生を豊かにする地学の視点」 関澤偲温

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